劣等生から抜け出したK君のお話!
夏休みの直前に担任から、
「君の成績では、どこの高校へも進学できませんよ。」
と言われた中学3年生のK君。
お母さんに付き添われて塾を訪問されました。
「0点ばかり」だったのは!
K君は、小学生のときに父親を亡くし、
母親が一人で育ててきました。
生活のために働く母親は、
K君を食べさせていくので精一杯で、
勉強のことまで配慮できなかったと言います。
それでも、高校へだけは行かせてやりたいと考えて、
何とかできないものかと来られたようです。
K君は、下を向いたままで、目もあわせようとしません。
無表情のままです。
劣等感を抱き、勉強にアレルギーを感じているようです。
塾の先生は、母親からこれまでの成績の報告を聞いて、
現状を推測します。
・学校の授業を聞いても、聞き取れないから理解できない。
・理解できていないので、宿題ができない。
・板書をノートに写してくるのだけれど、意味が分からない。
・教科書を読んでも、読み取れない。
「K君、ずっと辛かったんだね。」
塾の先生が話しかけると、
初めて顔を上げて、「うん。」と返事をしました。
1ヶ月で勝負する!
塾の先生が、お母さんに言いました。
「夏休みの1ヶ月間だけ、K君とがんばってみましょう。
ただし、1日8時間の勉強と、宿題を出しますよ。」
「どうだい、K君。やってみようか?」
しぶしぶK君は、「うん。」と答えました。
塾の先生とK君の特訓が始まりました。
朝の9時にK君が塾に来ると、先生は、
「K君。先生の車に乗りなさい。公園へ行くよ。」
「えっ、公園ですか?」
「そうだ、公園だ。キャッチボールをしよう。」
「うん、良いボールだ。すごいね!」
K君は、ニヤリとして、力いっぱい投げ込んできました。
「K君、左で投げてみてごらん。」
突然、先生が言いました。
「ええっ、左でなんか、投げたことないよ!」
「まあ、やってみな!ゆるいボールからだよ!」
K君は左で投げ始めました。
「そうだよ、うまい!何でも、初めはうまくいかないもんだよ。
今日から毎朝、左で投げる練習をしよう!」
手本を見せて、まねさせる!
教室では、先生はすべてのことを、先にやって見せます。
「この計算の練習をしよう。これは、こうするんだ。」
「分からなければ、そのときに言うんだよ、いいね。」
K君は、一生懸命、先生のやることを見ます。
「よし、ここまでを、自分でやってみよう。」
英語も数学も理科も、先生はとき方を示し、
解くときに必要なことを紙の上にまとめます。
先生が必要な知識をまとめてから、問題を解いて見せます。
1日に5科目、すべて同じ方法で説明します。
「宿題は、今日やった問題を、すべてやり直してくることだよ。
できるかい?」
「はい、できます。」
K君は、大きな声で答えました。
こうして、テストに出そうな重要事項をすべて勉強しました。
5日目からK君は、復習を2回づつやってくるようになりました。
夏休みの最終日、K君は1日も休まず、塾に来ました。
左で投げることが、とても上手になりました。
お母さんが塾に来られて、
「夜の2時ごろまで、一生懸命勉強していました。
この子のこんな姿を見たことがありません。」
「先生、僕でも勉強ができるのですね。楽しかったです。
でも、お金がないので、続けることはできません。残念です!」
「K君、分からないことがでてきたら、いつでも聞きにおいで。」
どんな子でも、勉強はできるようになります!
夏休み明けの実力テストで、K君は5科目380点を取りました。
報告に来てくれた母子は、涙を浮かべていました。
「僕、初めてワクワクしながらテストを受けました!」
K君は、涙を流しながら先生に言いました。
「よく、がんばったね!それが、K君、君の実力ですよ!」
塾の先生は、K君に優しく言いました。
「ところで先生、左で投げる練習は、何のためだったのですか?」
「それはね、今までとまったく違った感覚で勉強するためだよ。」
それまで、劣等感やコンプレックスに悩んできたK君を
よみがえさせたのが「左投げ」だったのです。
その子を良く見て、その子に合った方法を見つけさえすれば、
どんな子供でも、勉強はできるようになります。
均一的な授業をする塾では、絶対できない方法があるのです。